
「塩分の控えすぎ」「水分の摂りすぎ」も体が冷える
塩分を控えると体は冷えてしまう
かつて、東北地方では高血圧や脳卒中で亡くなる人が多かった。
それは、塩分の多い食物の摂りすぎが原因とされ、日本全国で減塩運動が展開された。
そのせいか、どうも日本人の頭の中には、「塩分は体によくない」という考えが刷り込まれてしまっているようだ。
しかし、塩分には体を温める作用がある。
暖房設備が十分でなかった時代の東北地方の人々が、厳寒の冬を乗り切るためには塩分の摂取が必要だった。
もし、人々が塩分をト分に摂っていなかったならば、高血圧や脳卒中で亡くなる前に、体の冷えから起こる風邪、肺炎、リウマチ、下痢、うつ病などによって命を落としていたに違いない。
一般に日本人の塩分摂取量は1日10g以下が望ましいとされている。
だが、かつて1日30g以上も摂取していた東北地方の人々でさえ、その平均寿命は日本人全体より、わずか2~3年しか短くなかったのである。
この差は塩分の過剰摂取のせいではなく、寒さのために戸外労働や運動ができなかったこと、また、野菜の摂取量が十分ではなかったこと、あるいは、寒さそのものによって平均寿命が少し短くなっていたのかもしれない。
現在、日本人は徹底した減塩運動によって塩分の摂取量を大幅に減少させた。
にもかかわらず、現状では40歳以上の日本人の半分である3500万人が高血圧にかかっている。
この患者数は塩分をいまの2倍も摂っていた時代と変わっていないどころか、逆に増えている。
つまり、塩分を減らすことは、体の冷えを増進させただけで、血圧低下にはつなかっていなかったのである。
水分の摂りすぎも体を冷やしていた
日本人の死因の第2位の心筋梗塞(1年に約15万人)、第3位の脳梗塞(約13万人)は、血栓症から起こる(第1位はがん)。
その対抗策として「血液をサラサラにしよう。そのために、なるべく多くの水分を摂るように」との指導がなされている。
その教えを守ろうと、ここ10年間、無理にでも水分を摂る人が増えた。
「朝起きて1杯、寝る前に1杯]だとか、「1日に何リットル飲むようにしている」など、意識して水を飲んでいるのが話題になることなど以前はなかった。
しかし、このようにせっせと血液サラサラに励んでいるにもかかわらず、血栓症になる日本人の数は減る気配にない。
むしろ逆に増加傾向にある。
はたして、水分を「努力して」飲むことが、血栓症の予防になっているのかどうか。
水は体を冷やす。
あらゆる物体は冷えると硬くなるのが法則である。
血栓症もひとつの「血の固まり」なのだから、冷え=体温の低下が発症する一因になっているのだ。
西洋医学では、水を飲めば必ず小便で排せつされる、という前提で治療をすすめる。
しかし、水を飲んでもお茶を飲んでも太る、という人がいる。
西洋医学では、摂取カロリーが、消費エネルギーを上回ることが肥満の原因だとするので、このようなことはあり得ないと考える。漢方医学は考え方が異なる。
「色白、水太りで、むくみやすく、ひざが痛くなりやすい」肥満の人には、体を温め、水分を排せっする防已黄耆湯を処方して治療してきた。
西洋医学では肥満の場合、体脂肪率を問題にするが、体脂肪はせいぜい体全体の20~30%の間を占めるだけである。
人間の体重の60%以上は水分なのだから、体重に影響するのは、脂肪より水分のほうが2倍以上も大きい。
ビニール袋に水を入れて吊り下げた様子を思い浮かべてほしい。
袋の下のほうがふくらむだろう。
それと同じく、特に女性は下半身や下肢がむくみやすく、大根足や下半身デブになりやすいのは、水のせいである。
むくみの元凶は水なのだ。
このように、体内に水分がたまった状態を、漢方医学では「水毒」という。
水が毒になるのである。
雨に濡れると体が冷えるように、体内に水分がたまると体の内部が冷え、万病のモトになる。
だから水毒になった場合、体内の余分な水分を体外へ排せつして、体を温めようとするメカニズムがはたらくことになる。
・風邪をひくと「鼻水、くしゃみ」が出る
・寝冷えすると「下痢=水様便」をする
・大病すると「寝汗をかく」
・夜に体温・気温が下がると「頻尿になる」
・偏頭痛持ちの人が「嘔吐(胃液という水分を排せつ)する」
これらの症状はすべて、水毒を体外に出して体を温め、健康になろうとする体のはたらきなのだ。
水分を摂りすぎたのにもかかわらず、発汗、排尿が十分でないと、水毒が体内に生じる。
そして、体を冷やし、体内の脂質、糖質などの余剰物、さまざまな老廃物の排せつ、燃焼を妨げ、さまざまな病気の原因をつくるのである。
こう考えていくと、アレルギー症状は、まさに「水毒症状」だ。
・アレルギー性結膜炎 → 涙
・鼻炎 → 鼻水、くしゃみ
・ぜん息 → うすい水様タン
・アトピー性皮ふ炎 → 湿疹
このように、人体にとっては大切な水分も、多すぎると害になる。
雨が降らないと干ばつになるが、降りすぎると洪水・水害が起こる。
植木に水をやらないと枯れるが、やりすぎると根腐れを起こす。
空気中の水分(湿気)が多くなりすぎると不快指数が上がるこう考えれば、宇宙の原則は、「過ぎたるは及ばざるがごとし」「出すほうが先」なのである。
したがって水分を摂るときは、体を温め、しかも発汗、排尿を促してくれる種類の水分(生姜紅茶、紅茶十梅干し、ハーブティー、こぶ茶など)を摂ることだ。