
脳出血とは
脳出血と脳内出血
頭蓋内で出血がおこると、流れ出した血液が脳の組織を圧迫し、最終的には細胞の壊死をさせます。
脳の細胞のほとんどは再生能力が無いので、壊死してしまうと、その部位が司っている機能が消失してしまいます。
特に危険なのは呼吸、心臓の機能など生命維持に関わる脳幹と言う部位が損傷した場合で、致死率が大変高いと言われています。
頭蓋内で出血がおこる病気は、
出血性脳梗塞、
脳内出血、
のちの項で扱うくも膜下出血および外傷性の急性硬膜外血腫などがあります。
今現在、脳出血とよばれている病気は、かつての脳溢血であり、主に脳内出血のことを示します。
ただし、頭蓋内出血をひっくるめて脳出血と呼ぶ人もいます。
脳内出血は損傷の部位に応じて、言語機能及び運動能力に問題が出る被殻出血、
意識が消失することが多い視床出血、先に触れた脳幹出血、脳室内出血、小脳出血等に分けられます。
損傷の部位によっては命が助かっても、
麻痺、昏睡状態の継続、認知症、高次脳機能障害等の重い後遺症が残ることがあり、発症した際には迅速な救命措置と、適切な治療を行う必要があります。
出血発作は軽く症状が出ないほど小さいこともありますが放置すると死に至る可能性もあり、早期の発見が望まれる病気です。
脳出血の鑑別は髄液採取(出血があると髄液に変化が起きるため)、頭部CTまたはMRI等の画像診断によって行われます。
少しでも様子がおかしいなと思ったら、すぐに脳神経外科にいくか、救急車を呼ぶ必要があります。
脊椎動物と脳
皆様、人間を人間たらしむるものはなんだとお思いですか。
いきなり怪しい出だしになりましたが、決して哲学のお話ではありません。
人間独得の行動は継続して安定した2足歩行をすること、火を使うこと、文字などを生み出し文明を持つことなどが挙げられます。
これらを可能にしているのは脳と言う名の神経の塊なのです。
脳は、私たちの身体の中で特に大切な器官のひとつです。
今、皆様がご使用になっておられるパソコンそのほかの電子端末は、脳の機能をまねて作られたものです。
私達の脳は実は機械の数倍の速度で膨大な情報を処理しています。
今、皆様が持っておられる病気への不安、仕事へのやりがい、パートナーへの愛情、友人への信頼、そういったものは、すべて脳が外部からの刺激を受けて、反応した結果体感できるものです。
うっかり絶対に相手にしてはいけない異性に惚れてしまうのも脳の悪戯だという学者もいます。
こういった精神機能ばかりでなく、呼吸、心臓の拍動等生命維持に必要な機能も脳がコントロールしています。
因みに、最近水族館で人気のクラゲには、私達のような「感情」が無いと言われています。
彼らには脳が無いからです。脳を持つのは、背骨がある脊椎動物の類だけです。
そのほかの動物にも神経節と言って脳に近い神経の塊を持っているものが多いのですが、我々の脳ほど早い情報処理はできません。
ただし、私たちの脳は、他の動物よりもつくりがやや複雑なため、様々な不具合が生じた時に治しにくいという欠点があるので定期的なメンテナンスが必要です。
脳出血と年齢
致死率75パーセント、好発年齢50~70。
数字によって脳出血を捉えると、今挙げたようなデーターになります。
しかし、ひとりの人の死は数字でとらえるべきものではありません。
筆者は、後程もう少し詳しくお話しますが脳疾患による突然死の遺族です。
この原稿は仕事でお受けしたもので、1私人としての立場のものではありません。
しかし、今、脳出血について調べてくださっている皆様にとって
「脳出血は本当に死ぬことがあって怖い予防すべき病気」と言うこと以上に「私」がご提供できる有用な情報は無いのです。
「75パーセント」のうち1人を突如脳出血によって奪われた「私達」家族は今も、
何故、もっと早くに気が付かなかったのか、何故前に出血発作を起こしたことがある人間をひとりにしたのかと問い続けています。
今、これをご覧になっている皆様には「命」があります。
どうか、それを守るために他人事と思わず、この病気に関心を持ってください。
あらかじめお断りさせていただきますが、脳出血は脳を持つ者誰もがなりうる病気です。
仮にお若い方が、これをご覧になっているとしたら今日から、将来のリスクを減らす努力をしましょう。
日に1度は塩分や脂質の多い出来合いのものではなく、栄養を考えて作った温かい食事をとり、酒量と煙草の本数を減らしましょう。
肥満の方は減量を、やせ形の方は充分な栄養摂取を心がけましょう。
あなたに今、与えられている健康は、当たり前のものではありません。
脳出血と性別
脳出血は男性に多い病気です。
と、申しましても同じように脳卒中のカテゴリに入れられるくも膜下出血における患者数の女性が占める割合ほど顕著ではなく「どちらかと言うと」と言う程度です。
そのため、女性の方も気を抜かず、脳出血の対策をとっていただければ幸いです。
男性と女性、どちらかと言うと男性の方が多いものに、飲酒率と喫煙率があります。
飲酒はどちらかと言うと、肝臓、喫煙は肺に悪影響を及ぼすというイメージがありますが、あなたがおとりになっているその嗜好品類がもしかしたら、脳出血のリスクを高めているかもしれないとしたら、どうなさいますか。
これはあくまでも統計学的な数値ですが、飲酒量が増えるほど脳卒中の危険性が増すという統計があります。
また、お酒の「あて」は塩分が多いものが多く、毎晩飲み歩くことで高血圧のリスクが高まる可能性もあります。
喫煙は、その煙の中に含まれる成分により末梢神経が収縮し、血圧が上がりやすくなる、また、血管壁が弱くなると言われています。
喫煙の場合は、煙草を吸われる方ばかりではなく、傍にいて副流煙を吸う受動喫煙においても血管にダメージが出ると言われています。
筆者はお酒、たばこが全面的に悪いと申し上げているわけではありません。
お酒が好きな方、煙草が好きな方はその1杯その1本を楽しみに生活されていることも分かっております。
それらをやめるということはとても難しいことです。
しかし、もし、あなたがその習慣を止めないのならば、今まで以上にご自分の身体に気を付けて検診を受けて頂きたい。心からそう思います。
脳出血の治療費
読者の皆様は、任意の医療保険に入っていらっしゃいますか。
わが国には国民健康保険と言う大変ありがたい(TPP交渉で先行きが不安ですが)制度があります。
普通の人ならば、3割、高齢、障碍、低所得と言った特別な事由があれば1割で医療が受けられる制度がある国と言うのは稀なのです。
公的な医療保険が無い国では、民間の保険料が馬鹿高い保険に入らざるを得ず、医療が受けられない貧民層がいることが問題化しています。
しかし、幾らお国が制度を整えていると言っても、限度があります。
脳出血の患者さんは平均しておおよそ1月入院し、治療費が126万円程度(差額ベッド代込)かかると言われています。
その不足分を補うのが任意保険です。
持病がある方でも加入できる保険が細菌は増えてきましたのでご自分のライフステージにあわせたものをご検討いただければ幸いです。
また、医療費については別項にも記しましたので、ご参照いただければ幸いです。
さて、読者諸兄、諸姉の皆さま方は、銀行や郵便局の通帳や印鑑、土地の権利書などのありかをご家族に教えてありますか。
何故、こんな不躾なことを申しあげるかと申しますと、突然倒れられた方のご家族は盛大に家探しをせねばならない状況に陥るからです。
いざ、と言う時に今あなたがおもちの資産が医療費支払いの元手になります。
保険の給付金が下りるまでには時間がかかります。
貯蓄があることがわかるだけでも、家族は安心して看護ができます。
どうか、思いやりと信頼の証として信頼できる人にお金のことを話しておいてください。自分は絶対に倒れない、その慢心は危険です。
脳出血の治療法
このサイトを読んでくださっている皆様に1冊の本をご紹介したいと存じます。
『やっと名医をつかまえた、脳外科手術までの七十七日』です。
これは新潮文庫から出ている下田治美さんの本です。
下田治美さんは『愛を乞う人』と言う映画の原作者でもあります。
そんな彼女が脳動脈瘤を治療するのに医師を探すお話です。
ちょっと過激な主治医捕獲(本当に捕獲という感じです)に丁度脳奇形が見つかって家中えらいこっちゃとやっていた筆者も思わず笑ってしまいました。
因みに本の中にはとんでもない医師も出てきますが、すべての医師がそういう人だというわけではありません。
しかし、高血圧や高齢といったリスクを抱える方が共に脳出血を予防してくれる主治医を選ぶことは本当に大切なことなのです。
脳出血の発作が起きた場合、患者は主治医を選べません。
救急車で運ばれて、その場にいた脳神経外科医が手袋を嵌めて「メス」とやるわけです。
手術が成功して初めて患者は「命の恩人」と対面することになります。
その、少しいい方は悪いのですが、良い医師にあたるかは「運しだい」になってしまうのです。
良い医師とは、きちんと手術のリスクや後遺症、治療日程を家族にも専門用語を使わずに解説してくれる医師です。
脳出血の場合、手術は開頭手術、軽症で血腫(血が固まってできた塊)を吸引して取り出せる場合は、吸引術が行われます。
また、未破裂動脈瘤が発見された場合は、クリッピング術などによって成長の抑止が行われます。